一般社団法人日本産業カウンセラー協会 東関東支部
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産業カウンセラーを訪ねて

東風「61号」

「陸前高田市に移住して思う事」

麻生 エミさん(陸前高田市)

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 この地に来るきっかけは、仕事の行き詰まりから、環境を変えたいという思いと、両親が高齢となり、何か手伝える場所にいたいという理由からでした。看護師をしている私は茨城の総合病院から陸前高田の診療所に転職しました。
当初実家からの通勤で、慣れない雪道、峠道を1時間弱かけ往復し、仕事内容も大きく変わり、かなりのストレスを感じておりました。雪が解け、少し運転にも慣れると、朝の車窓の景色に感動したり、道すがら現れる、カモシカやたぬきにドッキリさせられたり、楽しさも感じるようになりました。
 通勤時間がかかるのと、往診対応ができないので、仮設住宅を借りて住むことになりました。仮設住宅では、近所の方が声をかけてくださったり、ウニの差し入れがあったり、一緒に草取りをしたり、お正月には虎舞がやってきたり、楽しく暮らせました。仮設住宅の住人もだんだん減り、さみしくなり、取り壊しの話も出たの
で市営住宅に転居しました。ここでも、ご近所さんに「行ってきま~す」と声をかけ、時に健康相談に乗ったり、一緒に草取りしたりと過ごしてきました。高田の人は優しくて親切、我慢
強い人が多いと感じます。
 診療所では、採血の時に体調を伺いつつ、気になっていること、趣味を楽しんでいること、生活の中で頑張っていらっしゃることを聞く機会にしています。話を伺う時は、ちょっとだけカウンセリング技術を取り入れ、傾聴姿勢で肯
定的に返すよう心がけています。具合がすぐれず、ベットに休んでいただきながら、体調の変化を聞きつつ、背景にあるものも伺うようにして「大変だったんですね。周りに気を配りながら頑張ったので疲れたのでしょうね」など共感しながらケアしています。いろいろ悩むことも多いのですが、養成講座で学んだことを活かしながら、日々の仕事のなかで信頼関係をつくり、充実した時間を過ごせていると感じています。
 陸前高田市は岩手県の南部、宮城県との県境です。研修に行こうにも、仙台に行くのも盛岡に行くにも2時間以上のドライブで、公共交通機関を利用するともっと時間、費用が掛かり、研修に参加するのもなかなか億劫な土地となりました。茨城にいるときは水戸の自主勉強会、SP051とほほえみに参加し、カウンセリングをそばで感じ、話を聴くこと、話すことが手軽にできていました。勉強会に参加することで、自分の心の点検となり、話を聴いてもらう事で整理できる場でありました。また、勉強会は絶対的肯定の場であり、癒しの場だったと感じます。勉強会に参加することで、自分が癒され、エネルギーをもらっていたことに、離れてから気づきました。こちらに来て、研修に参加することも簡単ではなく、自主勉強会の情報もとらずで、カウンセリングから少し離れていました。
環境の大きな変化に心も体も疲れ、心がもやもやしていたと思います。コロナ禍で思いがけず、たかぼーさん主催の傾聴カフェやSP051の勉強会にZoomで参加できるようになり、懐かしさと肯定的な環境で、自分の心が癒され、元気が出ました。また、いろいろな講座にZoomで参加するようになり、自分の心の中でおこっていることに気が付けるようになってきました。
 「なぜか気分の落ち込みが強くなっている」「回復が遅い」「いらいらする」。ある講座に参加して、話しながら気が付きました。私は被災地にやってきたが、何もしていない。何をしているのだろう? という思いが心の奥底におりのように溜まっていました。ボランティア活動もしていない、地域のために何もしていない、そんな思いが積み重なっていたようです。心の中で、「被災地に来たけれど、何もできていない自分は、ダメな人間なんだ。誰の助けもできない、何のためにここに来たんだ?」と自分で自分を批判していたようです。そのことに気が付いたあと、Caféふらっとに参加し、陸前高田の様子を聞かれて言葉にしたとき、自分は感謝の気持ちをもって仕事ができていたこと、カウンセリングマインドをもって生活してきたことを実感しました。仕事では、採血の時に体調を聞き、時に生活の様子、仕事のストレスについてなど聞かせていただき、席を立つときには「ありがとうございます」と患者さんに声を
かけています。ほかの看護師も同じです。最近「お大事に」は言わなくなってました。職場でも、職種にかかわらず、「ありがとう」を伝えるようにしています。私がやりっぱなしだったところを片付けてもらったときはもちろん、私がしようとしてことを先にやってくれていたり、助けてくれたり、何でも気が付いたら「ありがとう」と言ってます。先日、検査が立て込んであたふたしていたら、事務のAさんが、先回りして患者さんに声をかけてくれたり、カル
テを持っていってくれたりしていました。お昼休み時間に「Aさん、さっきはありがとう」、Aさん「何のこと?」、私「さっき、忙しくって、パニックっていた時に、いろいろやってくれて、ほんとに助かったよ。ありがとう」、Aさん「そんな事ないよ」と笑顔で話してくれました。感謝の言葉が増えるにつれ、職場でのコミュニケーションが良くなり、情報共有が速やかにでき、話し合いもしやすくなりました。これが、働きやすい職場づくりなのかなあと思っています。
 被災地に来て、特別なことは何もしていないけれど、診療所に来たら、笑っている時間ができるといいなあ、安心できる時間ができるといいなあと思いながら患者さんと関わっています。待合室での話題作りになればと思い、テラスでお花を育てたり、折り紙でバラや季節のものをつくって飾ってみたりしています。興味を持ってくれた患者さんから、フィードバックをいただいたり、笑いながら話ができるのがとても嬉しいです。ある時は、私の作った折り紙のバラを持って帰り、ブローチに加工してくれた方もおりました。岩手のなまりに茨城のイントネーションが入り、おかしな訛りでしゃべる看護師ですが、気軽に声をかけてほしい、話を聞かせてほしいと思っています。大変な状況を乗り越えられた方々への敬意をもち、少しでも癒しの場になれることを願って仕事をしています。
 復興とは何か? といろいろ考えることもあります。
10年目でテレビ報道もドラマも様々ありましたが、被災した方は「テレビ、見てないよ。見たくないから」と。国営の津波伝承館
ができていますが、地元の人は行ってないそうです。心の復興ってどうなることなんだろう? と考えながら、ここで、今できる事を、できるだけ、背伸びをせずに暮らしていく。まずは自分の気持ちを感じ取り、メンテナンスしながら、地域の方々と共に暮らしていけたらいいなあと思っています。機会がありましたら、ぜひ、陸
前高田市に遊びに来てください。

過去の掲載(産業カウンセラーを訪ねて)

東風「60号」
障がい者雇用の今とこれからPDF
大杉 利裕さん(千葉市)
 一月一五日に令和二年の障がい者雇用状況結果が発表されました。企業は障がいのある従業員を一定割合で雇用する義務があり、毎年の六月一日時点の雇用状況を報告します。…


東風「59号」
産業カウンセラーとの出会いは、まさにプランド・ハプンスタンスPDF
菅野 貴之さん(日立市)
 みなさん、こんにちは! イベント「傾聴café」を主催しています、アラフィフ真っただ中の「たかぼー」こと菅野(かんの)貴之です。福島県出身、ひたちなか市在住です。平日は、市内の電機メーカーで品質管理の仕事をしています。…


東風「58号」
そう言われちゃ断れないなぁPDF
秋山 礼子さん(船橋市)
 養成講座の受講生だった頃から、もう10年も経ってしまいました。今でもよく覚えているのは、実技のクラスが始まる前に、輪になって3分間、自分の話をするシーン。何を話すか、前の晩からずいぶん悩んで考えた記憶があります。…


東風「57号」
説教に心を開いてもらうにはまず傾聴PDF
花和 浩明さん(常総市)
 私と産業カウンセラーとの出会いは、今から17年ほど前にさかのぼります。私は茨城の曹洞宗寺院の生まれで、宗門系列の大学を出て寺を継ぎました。寺を継ぐことには子供の頃から大きな抵抗がありました。…


東風「56号」
私のライフワークPDF
高山 恵子さん(千葉市)
 2011年3月、東日本大震災翌日、停電で水道もトイレも暖房も使えないアパートで寒さに独り震える中、 合格通知が届いた。 「うれしい。でも、まだまだだ」これからどうしていったらいいのか、震災のショックと相まって、不安なスタートだった。…


東風「55号」
人がその人らしく人生を全うするお手伝いをPDF
田邊 唯克さん(水戸市)
 私が産業カウンセラーという資格を知ったのは今から7年前、その頃私は役職定年と言われる55歳を迎えており、お世話になった職場にも一定の責任は果たしたかな、これからは自分のやりたいことに力を注いで行こう、と具体的な行動を考え始めていた時でした。…


東風「54号」
養成講座や支部研修が心の支えPDF
岡村 健一さん(浦安市)
 私は産業カウンセラーの資格を持つインタビュアーです。インタビューを始めてから、かれこれ十五年になります。ここ数年は上場企業のトップを中心にインタビューをしています。…


東風「53号」
ひとつひとつの仕事にキチンと向き合ってPDF
原田 久美子さん(流山市)
 私は約3年間「ジョブサポート流山(地域職業相談室)」で流山市の相談員として働いています。この施設は、ハローワーク松戸と流山市との協力により、求職者の方々へ求人情報の提供および職業相談と紹介を行っています。…


東風「52号」
「ソーシャル・キャリアコンサルタント」として生きるPDF
五十嵐 郁一さん(牛久市)
 私は現在52歳ですが、産業カウンセラーの資格を取得したのは2006年です。今までは、養成講座で学んだことを拠り所に、企業に勤める社員として、主に研修の企画開発・運営や講師など、人材開発に関わる仕事をしてきました。…


東風「51号」
異色の二人でカウンセリング1ページ目 / 2ページ目
 クラージュこころカウンセリングルーム/倉持良信さん・杉山裕子さん(結城市)
「お笑いコンビじゃありません!編」…


東風「50号」
養成講座の副産物
面接実習は、私にとって「大リーグボール養成ギブス」だった…1ページ目 / 2ページ目
花木 裕介さん(柏市)
 「花木さん、ちょっと良くない結果が…」と いう切り出しに、僕はドキッとし怯える。そし て、医師ははっきりとこう口にした。 …


東風「49号」
産業カウンセラーただいま模索中1ページ目 / 2ページ目
 藤澤 久美子さん(船橋市)
同僚のメンタル不調、大学での学びなおし、傾聴ボランティア、そしてラリー…。これまでのの経験のひとつひとつが、産業カウンセラーへの道につながっていると信じて。…


東風「48号」
養成講座がくれた信頼のきずなギブス1ページ目 / 2ページ目
 久保村 俊哉さん(流山市)
私は正規・非正規併せて約50000人の従業員が働く小売業で人事労務担当の仕事をしております。 全従業員の労務管理全般と疾病等の休職者管理等を主に行っております。…

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